はじめに:「信託」の構造
"信じて託す" ——「指揮者」と「棟梁」の関係性
メドピアのプロダクト組織は、「指揮者」と「棟梁」の存在によって作られることを理想形としています。
指揮者はUser/Client Valueに奉仕し、棟梁エンジニアはProduct Valueに奉仕する。 だから指揮者はProduct Valueの実現を棟梁に「信じて託す」——この関係性が、メドピアのエンジニア人事制度の根幹にあります。
関連記事
AIがレバレッジの定義を根本から変えたパラダイムシフトの中で、なぜこの制度が必要になったのか。 「信託」という概念を軸に、代表の後藤がnoteで伝えています。
Contents
信託の範囲がGradeを決める
この「信託」の考え方をそのまま等級に落とし込んだのが、新しいエンジニア人事評価制度です。このエンジニアにどこまでの開発を信じて託せるか―すなわち信託の範囲が、そのままキャリアの段階になります。
※本制度は2026年4月よりプレ運用を開始しており、正式移行は2026年10月を予定しています。
5段階のGrade
「棟梁」=G4以上
G1〜G3は棟梁になるための過程であり、信託の範囲が広がることでGradeが上がります。
Grade | 呼称 | 信託の範囲 | イメージ |
G5 | Grand Master / Tech Conductor | Products / Company | 複数プロダクト、または技術組織全体の構想と牽引 |
G4 | Master(棟梁) | Product | プロダクト全体 |
G3 | Senior | Epic | 従来ならチームを組成する規模のPJ |
G2 | Junior | Story | 1つの画面・機能の完結した実装 |
G1 | Apprentice | Task | 小さな機能の実装 |
3つの要件軸
Gradeが上がるにつれ、以下の3つすべてが高い水準で求められます。
3 つは同列ではありません。Quality が土台にあり、その上に AI Leverage と Direction が乗る——という構造になっています。
AI の登場により、かつてマネジメントが担っていた「人を束ねて成果のレバレッジを利かせる」役割は、AI を使いこなしてアウトプットを拡張する力へと置き換わりました。 3 軸の真ん中に AI Leverage が置かれているのは、このパラダイムシフトを制度に明示するためです。
1. Quality — 信託の基礎
中長期の時間の審判に耐える品質。技術者倫理、保守性の高い設計、リスク管理、問題解決力、未踏領域の探究。指揮者が「この人なら任せられる」と判断する、エンジニアリングの聖域です。
2. AI Leverage — 圧倒的なアウトプットを生む力
AIを「大工」として使いこなし、コーディングエージェントのパフォーマンスを最大化する。AIが出力したコードの正誤を判断する眼力。AIが自律的にロングランできる環境を整備し、暴走しても回復可能な仕組みを構築する力。
3. Direction — プロダクトの北極星を示す力
技術の力で、プロダクトが進むべき方向を指し示す。ユーザー・クライアントの体験への理解、戦略の言語化と意思決定、組織の変化のモメンタムを生むフォロワーシップ、本質を見抜き「あるべき未来」を描くビジョン。
評価の考え方
従来のMBO(目標管理制度)は廃止し、月報とGitHub等のログによる事実ベースの評価に移行しています。期初にプロダクトディレクターや事業開発者とプロダクト開発方針をすり合わせ、期中は月次で事実を蓄積し、期末にその実績をもとに評価を行います。
評価基準は固定ではありません。組織・業界の技術水準が上がれば、求められる水準も上がる。 ——進化を前提とした動的な基準です。
制度設計の経緯
本制度は、棟梁エンジニア自身が設計しました。 「棟梁自身が棟梁の物差しを作る」——その設計プロセスと思想を、制度設計を主導した 3名の棟梁エンジニアが語っています。
本制度はエンジニア主導で設計され、現在プレ運用中です。 運用を通じて磨き続けていきます。