2022年7月にスタートしたメドピア開発組織の新体制。そこでアプリのテックリーダーを担うのがiOSエンジニアの小林雄一です。メドピアでtoC向けモバイルアプリのリリースが増加した時期に入社し、開発組織の構築に尽力してきた小林は、今回の体制を「あるべき形に一歩近づいた」と評します。新体制で目指すメドピアのモバイルアプリ開発を、小林とVPoEの平川が語りました。
アプリ テックリーダー 小林 雄一
2020年メドピア入社。入社後から現在に至るまで、スギサポwalk/eatsアプリのリードエンジニアを務める。7月よりモバイルアプリ領域のテックリーダーに就任。
VPoE 平川
2018年メドピア入社。新規プロジェクトの立ち上げやエンジニアのマネジメント、採用などを担当。「ありひー」の愛称で親しまれている。
アプリ開発における集合知の重要性
雄一:昨年末に話していたことが実現しましたね。
平川:雄一さんと私が同じ部署にいた時に話したことですね。
――どんな話をしていたんですか?
雄一:私とありひーさん、そして他のマネージャー陣で、「いずれはテックリーダーのようなポジションを開発組織に作らないといけないよね」と話したことがあったんです。メドピアの開発組織は少数精鋭で、かつプロダクトの数が多い。同じプロダクトや事業部のエンジニア同士は密に連携しやすい。けれど同じ技術領域のエンジニアが横のつながりを深めるにはテックリーダーを置いたほうが、技術的な問題の解決がもっとスムーズになるのではないかと。
平川:当時は技術領域別に組成するにも人数が少なかったので、すぐには実現できませんでしたが。
雄一:そういった点で、今回テックリーダー就任の話をいただいた時に「あるべき形に一歩近づいたな」と思いました。
――あらためて、モバイルアプリのテックリーダーの役割を教えてください。
雄一:主な役割は、メドピアにおけるモバイルアプリの開発において取り入れる技術を決めていくことです。メドピアが手掛けるモバイルアプリに対して、普遍的な技術がマッチしているのか、新しいものに置き換えるのが妥当なのかといった検討は、現状にフィットする技術を日頃からキャッチアップし、導入するか否かを判断していったほうが健全なためです。
平川:実は、3年くらい前までのメドピアは技術面ではサーバーサイドとフロントエンドが強いといったイメージを持たれていたんです。しかし、雄一さんが入社した2020年頃からは、BtoCのサービスをモバイルアプリで提供することが増えてきました。今後もモバイルアプリが増えていくことを考えると、開発体制や技術をもっと強化しないといけません。アプリのテックリーダーはモバイルアプリの技術力向上という点で、会社にとっても重要な意味を持ちます。
雄一:そしてもうひとつの役割は、冒頭の話にあった「エンジニア同士の横のつながり」の構築です。
▲エンジニア組織の新体制
――テックリーダーが、事業部間の横のつながりをつくるんですね。
平川:この新体制が始まる随分前から、雄一さんがその課題解決に着手してくれていたんですよね。なので、今回役割として明確にお願いすることにしました。
雄一:1〜2年前から、アプリエンジニアだけで集まる週次ミーティングを始めており、情報共有やいろんな相談ができるような仕組みになっています。
――なぜ率先して横のつながりづくりに取り組んでいたんですか?
雄一:開発を進める上で手に入れるノウハウは事業部を越えてもっと共有されるべきだと以前から思っていました。後から「これをやっておくべきだった」とわかったとき、別の事業部ではそれが既知のことだったりするんです。集合知としてアプリエンジニアで共有できていれば、スムーズに進む開発がある。特にアプリ開発において、集合知の共有は重要だと感じます。
――アプリ開発において特に情報共有が必要になるときとはどんな場面でしょうか?
雄一:iOS/Androidアプリの開発には、プラットフォームの思想や規定を汲む必要があります。AppleやGoogleが決めた要件に従わないと、アプリの審査が通りません。その要件は非常に細かくて、しかも年々増えています。要件のキャッチアップができていないまま機能を追加して審査に出せば、ある日突然「このアプリは許可できません」となりかねません。機能リリースがスケジュール通りにいかなければ、ビジネスチャンスを逃すことになります。
そこでモバイルアプリ開発では事業部を越えて情報共有を行えるように整備しているところです。
平川:週次ミーティングなどの組織の運用改善もそうですが、雄一さんは入社後すぐからアプリエンジニアの採用にも携わり、業務委託の方が中心だったアプリ開発組織を一から作ってくれました。組織を整えてもらう上で非常に頼りにしています。
Apple好きから始まった、アプリエンジニアとしてのキャリア
――雄一さんはどのような経歴でアプリ開発の研鑽をされてきたのでしょうか?
雄一:アプリの開発を始めたのは10年くらい前です。新卒で入社したのはソフトウェア開発の会社で、病院向けのデータ管理システムや、半導体の設計に関わるアプリケーションの開発に携わりました。その当時はスマホも普及していませんでした。
それからの約10年で、スマホが普及し始め、モバイルアプリの開発が盛んになってきました。しかし、私は変わらずネットワークを使ったシステムの開発をやったことがないままで…。もっとキャリアの幅を広げたいと思い、転職を決意しました。
受託開発の会社に転職して、そこではWebサービスやモバイルアプリの開発に携わりました。サーバーサイドなどさまざまな開発を担当しましたが、その中でiOSアプリの開発に面白みを感じたのが、今につながっています。iOSのバージョンで言うと「iOS 5」の時代が、私のiOSエンジニアとしてのスタートです。
――なぜiOSアプリの開発に面白みを感じたのですか?
雄一:もともとAppleの製品が好きだったんですよね。Appleが今ほど認知されていなかった頃、銀座のApple StoreにMacを買いに行ったことを今でも鮮明に覚えています。当時はものすごくワクワクしながら20kgのMacを担いで家路につきました。それくらい好きなAppleだったので、ソフトウェア開発にも携わりたい、と思ったんです。
当時はiOSエンジニアも今ほど多くなかったですね。今のiOSエンジニアの多くはSwiftを使っていますが、あの頃はObjective-Cというニッチな言語でした。Appleしか使っていないようなプログラミング言語で、使う人もノウハウも少なかったんです。「iPhoneのアプリを作りたい!」という意志を強く持っていないとやらないような言語で、私もiOSアプリの開発に魅せられたエンジニアの一人だったというわけです。
以来、フリーランスになったり、プログラミングを教える講師を務めたりしてきましたが、事業会社で社会貢献度の高いサービスを作りたいと思い、メドピアに入りました。現在も基本的にiOSアプリの開発がメインです。
――経験の豊富さが伝わってきます。先ほど平川さんがおっしゃっていた「常に学びの姿勢を持ち続けている」というのは?
雄一:実は、趣味の範疇ですが、自分があったらいいなと思うモバイルアプリを個人で作っていて、そのノウハウをメドピアでの開発にも活かすようにしています。仕事ではチーム開発で大きなサービスを作ることができますが、個人でモバイルアプリの開発からリリースをやり通すことで得られる知識や経験は、メンバーから何か聞かれた時に答えられる素養になるので、いい学びの場になっています。
平川:プライベートでも何か作っていたり、プログラムを触っているエンジニアは成長しますね。
ユーザーが安心安全な状態で使い続けられるアプリを
ーーメドピアのエンジニアリングにおけるイシューをまとめた「テックイシュー」がありますが、アプリのイシューについてはどのように検討されましたか?
▲モバイルアプリ領域のテックイシュー
雄一:これらはアプリエンジニアのメンバーと共同で検討しました。メドピアのモバイルアプリ開発において、ここはしっかりクリアにしたいよねという指針は以前から共通認識として存在していました。しかし、今回、社内外に公表するために言語化するプロセスで、改めて目線合わせができたと感じています。仮に採用面接などで他社のエンジニアの方との会話に挙がっても、ファクトをもって伝えられるイシューだといいね、という視点も持ちながら決めていきました。
――決めた3つのテックイシューについて、詳しく教えてください。
雄一:この3つは必要不可欠で、それぞれ影響しあうものでもあります。
まず「アプリプラットフォームの思想に寄り添う」については、先ほどお話したようにAppleやGoogleといったアプリプラットフォームの審査要件などに対して臨機応変であることが、ビジネスとしてスムーズに推し進めるにあたって重要だと考えています。
そして、AppleやGoogleは最近特にプライバシーやセキュリティなど「ユーザー保護」に力を入れています。そういう意味で2つ目のイシューとして「ユーザーの安心安全のために」と置いているように、堅牢なセキュリティや使いやすいUX/UIを目指すことを、サービスを提供する上で第一に考えています。
3つ目の「事業を継続的に伸ばすエンジニアリング」は、仕組みをつくる、自動化できるところはするという、エンジニアとして当たり前な話でもあります。しかしメドピアのモバイルアプリ開発歴はまだ浅く、少数精鋭でサービスを成長させてきました。少数精鋭の体制であることは良し悪しどちらもあると思いますが、いかに効率よく安定的にサービスを提供していくかは事業を成長させるためには非常に重要な要素です。実際に改善し続けていく、という意思をここでは示しています。
平川:それこそ事業を継続的に伸ばすエンジニアリングの実現において、テックリーダーの動きが効果的に活きてくると思います。
これらのイシューを念頭に置きながら具体的な開発に向き合うことになりますが、ユーザーが安心安全に使い続けられるモバイルアプリの開発、組織づくりをしていってほしいと思います。
――最後に、メドピアのモバイルアプリ開発の展望を教えてください。
雄一:メドピアには数多くのサービスがありますが、Webのみで展開しているものも多くあり、モバイルアプリも必要ではないか?と思うものもあります。「アプリでできたらユーザーのためになるよね」という提案がアプリエンジニアからできるように、私自身も自社のサービスをテックリーダーの視点で横断的に見ていきたいと思っています。
アプリ開発をしているとビジネスチームやPM、エンジニアなどいろんな方とやり取りする機会があるのですが、メドピアは役員も含めてコミュニケーションがフラットで、Credoの「健全に”ぶつかり合う”」が体現できています。そんな動きやすい環境や組織だからこそ、枠にとらわれず、いろんな提案をアプリエンジニアからできるといいなと考えています。ひとつのアイデアが、より一層ユーザーに役立つサービスにつながるかもしれませんから。
アプリエンジニアも、ボトムアップで色々提案してくれるメンバーばかりなので、そういった点も楽しみです。
平川:アプリに限った話ではないですが、メドピアの事業はいずれも、患者さんや、健康を目指す人々を支えるために推し進めているものなので、今後もサービスをより多くのユーザーに届けていきたいです。
メドピアのモバイルアプリ開発を、組織面と技術面から牽引してきた雄一さん。ユーザーのためにアプリができることを考え続ける姿が印象的でした。ユーザーが安心安全に使い続けられる開発、これからが楽しみです。
執筆:関矢瑞季
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