2022年7月から始動したメドピアグループのVPoE+テックリーダー体制。各技術領域を牽引するテックリーダーとして5名が任命されました。
体制スタート初年度の1年間、テックリーダーがどのような活動をしてきたのか、メドピアの技術に対してどのようなインパクトをもたらしたのか、それぞれの領域を担うテックリーダー5名で座談会を行いました。前編ではテックリーダー体制の運用について振り返ります。
▼座談会参加メンバー
VPoE 兼 サーバーサイドテックリーダー 平川 弘通(@arihh)
シニアテックリーダー 笹谷 清隆(@KiyotakaSasaya)
セキュリティテックリーダー 侘美 怜(@reirei_As)
モバイルアプリテックリーダー 小林 雄一(@imk2o)
フロントエンドテックリーダー 小林 和弘(@kzhrk0430)
新技術採用の背景にあったテックリーダー発の勉強会
平川:私たちがテックリーダーになって1年が経ちました。まずは実際の活動内容や成果を振り返りますが、みなさんいかがでしたか。「技術領域の牽引」という面で、勉強会によるメンバーの知識やスキルの向上にはそれぞれ力を入れてきたのではないかなと思います。
雄一:モバイルアプリではFlutter開発の勉強会を行いました。Flutterはメドピアグループでもすでにフィッツプラスが導入しているアプリケーションフレームワークですが、業界内でも開発事例がかなり増えてきています。今後新規サービスの立ち上げやリニューアルでFlutterを使うかどうかは必ず検討に上がってくるはずなので、そのときにモバイルアプリのメンバーが自信を持って知見を活用し、実際手を動かせるように準備をしておきたいというのが背景にあります。
平川:同じく技術トレンドへの適応で言うと、フロントエンドでは輪読会で学んでいた技術が現場で採用を検討しているという話がありましたよね。
和弘:そうですね。フロントエンド輪読会でReactのドキュメントをテーマにした直後にあるサービスのリニューアルでReactを使いたいという要望があり、Reactの利用を検討し始めています。輪読会のテーマに選んだときは、Vue.jsの良さを再確認するための比較くらいの気持ちだったのですが、現在ではむしろReactが普及しつつあるため、結果的に次の技術を取り入れるきっかけになったのは良かったなと思います。
平川:サーバーサイドもメタプログラミングRubyの読書会や、技術アドバイザリーの前島さんとともに最新情報の共有をする雑シェア会などで社内の研鑽の場を作っています。みなさんの話を聞いていると、勉強会が新技術の採用にも繋がっていってるのは非常にいい動きだと思いますね。
EOL(End Of Life)に当たり前に対応する風土に
侘美:新技術への攻めだけでなく、守りのクオリティも高められたのはひとつの成果ではないかと思います。今年1月に開発に利用しているSaaSでセキュリティインシデントが発生した際に、速やかに自分が音頭をとって対応に当たることができたのは、まさにテックリーダーの役割だったと言えると考えています。この外部起因のインシデント以外に大きな事故がなかったことそのものを、成果と言いたいです(笑)。
平川:セキュリティ領域は何も起こらないことが成果ですからね。
侘美:そうなんです。アピールしにくいですけどね。
勉強会で言えば、OWASP Top10の10個の脆弱性の攻撃と修正を学習できるRailsGoatというOSSを題材にした勉強会を開催したことがが挙げられます。テックリーダーになる前からやってきたことではあるけれど、ゲームデーの開催もそうですね。これはセキュリティインシデントを想定したシミュレーションですね。障害対応に慣れていないメンバーを含め、社内の様々なサービスを対象に開催しています。
平川:EOL(End Of Life)への意識が全体でより高められたのも大きいですよね。アップデートにゆとりを持って動けるようになったように思いますが、侘美さんはどう思いますか。
侘美:たしかに、セキュリティテックリーダーである僕がリードをしなくても、事業部でみんながかなり主体的にアップデートしてくれるようになりました。僕がしているのは大きいアップデートを除けば月イチのアナウンスくらいです。当たり前に対応する風土ができましたよね。今や、アップデートに対応していないプロジェクトの方が少数なので、当然取り組むべきという意識が生まれているように思います。
組織マネジメントも「技術領域の牽引」の手段のひとつ
平川:技術に特化することを役割としたテックリーダーでしたが、とくにモバイルアプリテックリーダーの(小林)雄一さんには組織マネジメントの部分もかなりお任せしてしまったなという意識があります。
雄一:ほかの領域とは少し動き方が違ったかもしれませんね。でも、組織マネジメントも結局は技術領域の牽引の手段のひとつなので、自分の役割だと思っています。
モバイルアプリはチームが組織として実際に存在しているわけではないですが、サービスを横断して連携がとれるよう意識していました。組織横断的な課題解決の仕組みづくりは以前から取り組みたいテーマだったので、テックリーダーになってすぐ本腰を入れて取り組みました。具体的には週次でアプリエンジニア同士で集まり、それぞれが課題に感じていることを持ち寄って解決していく場を作っています。そうすることによって、一人だけで解決するのではなく、アプリエンジニア同士でそれぞれの得意領域を活かして相互にサポートする環境ができました。
アプリエンジニアは少人数なので、問題をひとりで抱えがちです。そこをお互いに助け合えるようにしたくて、他にも1on1や雑談会をやっています。
平川:雄一さんはiOSエンジニア出身ですよね。テックリーダーをiOSとAndroidそれぞれで立てた方がいいのかなとも思っていましたが、そういった横の動きができるということは、このままでも良い方面に進んでいそうですね。
雄一:はい、モバイルアプリエンジニアが使用言語の違いを問わずお互いにサポートし合う環境ができたので、今はこの体制のままでいこうと思っています。
さらなる技術力向上のための課題とは
平川:ここまで注力してきたことや成果を共有してもらいましたが、次はこの体制で課題に感じた点を話していきましょうか。
笹谷:自分はこの一年かなり事業部にコミットしていて、改善を急ぐべきプロジェクトに入り込んで自らテコ入れしていくことを重視してきました。そのため、テックリーダーとしての仕事に100%のリソースを割けなかったことは課題です。
一方で、大規模リリースのチェックなど、これまではありひーさんが対応していた業務を引き継いだことで、業務の幅も広がりました。来期はテックリーダーとしてもっと動けるように、自走できる事業部作りに取り組んでいきたいと思います。
そのほかで言えば、改善系に手が回っていなかったプロジェクトを、今期は自分である程度テコ入れしていました。目処が立ち始めたプロジェクトはあるので、少しずつ任せていけるようになりそうです。
平川:たしかに、今期は改善を回せたプロジェクトが増えましたね。ありがとうございます。
和弘:私も実のところ自分のリソースの95%は担当事業部の開発に回していました。ただ、事業部にコミットしていたからこそ、そこで新しい技術を使ったり、VueとNuxtのアップデートを積極的にして、それを事業部横断でフロントエンド全体に共有することができたという面もあります。
とはいえ、テックリーダーとしては、今後長期的目線で技術力を上げていくためにも採用や育成が優先度の高いミッションだと思っています。
平川:今期のフロントエンドエンジニアの採用は、和弘さんに想定以上に時間をかけて頑張ってもらっています。
和弘:そうですね、最近は多いときで週に5回面接しています。
雄一:フロントエンドは特に急務なのですね。モバイルアプリ領域では、直近の採用強化よりも長期的な技術広報寄りの取組みにもう少し注力しておきたかったと思っています。テックブログをあまり出せていなかったんですよね。
平川:テックブログは確かに。みんな良い知見やアクションがあるのでもっと出しにいってくれると嬉しいです。でも、モバイルアプリチームはイベントへの登壇機会が多かったですよね。サーバーサイドはカンファレンスの出展がしっかりあった割に登壇が少なかったのが反省です。技術発信にはそれぞれまだ伸びしろがありますね。
生成AI、データ分析基盤……新領域への対応も急ぐ2年目へ
平川:最後に、テックリーダー体制の今後に向けて、目線合わせをしましょう。この体制には「今後も組織がスケールし続けられるように、役割を分散させること」と「組織を横断した連携強化」という狙いがありました。前半で話があったように、技術力の向上や組織づくりに向けてそれぞれの領域が自走してくれて、組織がスケールし続けられる体制はまず構築できたと思っています。
一方で、サーバーサイド、セキュリティ、アプリ、フロントエンドといった既存の領域ではない新分野に早く視野を広げる必要性を強く感じています。具体的には昨年末から急速に普及し始めた生成AI。ChatGPTを始めとするLLMの普及を機に、メドピアは生成AIをどう扱い、事業の発展にどう活かすか、社内方針を固めているところです。
ほかにも、医師情報や各サービスからとれる情報の活用とその分析基盤の話。こちらも別の技術領域として捉え、技術面で事業の進行を妨げることのないよう早急に整備すべき分野だと思っています。
そういった変化に合わせながら、技術力を事業横断的に底上げするために、新領域の第一人者となる人や、リーダーが既に立っている領域のエンジニアの育成や採用も急務です。
事業の進化に合わせてわれわれの組織も変化していくことを前向きに捉えながら、テックリーダーのみなさん主体で技術領域を牽引し、事業成長を加速させていきましょう。
VPoE+テックリーダー体制で走り出した1年の成果と課題を率直に語り合った振り返り会。次回はテックリーダーがコミットすることとして掲げた「テックイシュー」について振り返ります。
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